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2020年11月号

「簡単な予測だ――バイデンが勝つ」

テレビ朝日アメリカ 社長  武隈 喜一

 「民主党員諸君、恐れる必要はない。私のこれまでの選挙予測の中では、今回はもっとも簡単な予測だ。バイデンが勝つ」――誰もが米国選挙通になるこの時期に、しかも投票日前日にこんな大胆な予測をしたのは、軽佻浮薄なコメンテーターではない。
 大胆な当選予測が載ったのは、11月2日付の”Washington Post”。予測をしたのはヘンリー・オールサンHenry Olsenというコラムニストだ。オールサンは米国保守政治分析の専門家で、中でも労働者階級と共和党の関係の変遷とポピュリズムについて研究を続けてきた。中間選挙を含めた2年ごとの選挙予測はその正確さに定評があり、2016年の大統領選挙と議会選挙も正確に予測した。

  「激戦州、一つも取れず惨敗」

 さっそく、オールサンの予想を見てみよう。


大統領選挙獲得選挙人数予想
https://www.washingtonpost.com/opinions/2020/11/02/henry-olsen-2020-president-congress-election-predictions/

 なんと、トランプ大統領は、フロリダ、ウィスコンシン、ミシガン、ペンシルベニアの激戦州を一つも取れず惨敗する、という見立てだ。
 そして、民主党は上院でも多数を取り、現在多数の下院でも議席数を伸ばす――つまり民主党は大統領、上下院を掌握すると予想している。
 さて、バイデン勝利の理由について、オールサンは、人を食ったように、「それはトーマス・ペインの有名な著作の通り、コモン・センスだ」と述べている。


上下院の議席予想
https://www.washingtonpost.com/opinions/2020/11/02/henry-olsen-2020-president-congress-election-predictions/

 オールサンによれば、再選に臨む大統領が判断されるのは、もう一期に値する仕事ぶりをしてきたかかどうか、という「コモン・センス」であり、「一期目についての国民投票」となる再選選挙では、市民の信頼が得られるかどうか、が最大の挑戦であり、米国人の「コモン・センス」に照らして、トランプ大統領はその信頼にこたえられなかったのだ、という。

  「評価する」が50%超えない初の大統領

 オールサンの分析によれば、歴史的に二期目に挑む大統領の「一般投票」の獲得率は、「大統領の仕事を評価するか」という世論調査の最新の結果とほぼ同じで、「評価する」が一度も50%を超えなかった初めての大統領としてのトランプが、最も高い数値を示したのが、2020年4月2日の47%であり、11月1日にはそれが45%と、大きな伸びを示していないことが、浮動票の伸びを含めて得票の大幅なアップを期待できない理由だと推測する。
 選挙人の数では前回と同じように逆転できるのではないか、という問いに対してオールサンは、「そのためには〈仕事の評価〉が47%を超えなければならなかったが、トランプは9月29日第一回討論で粗暴な対応を見せたため、それが支持率の低下につながった」と見ている。
 しかも前回選挙の推進力となった「大卒未満の白人層」の支持も2016年の64%から59%へと落としている。このことからも、ウィスコンシン、ペンシルベニア、ミシガンでのバイデンの勝利は手堅く、フロリダ、アリゾナも2018年の中間選挙で見たように、バイデンが勝利するだろうとオールサンは述べている。
 常に話題に上る「隠れトランプ」の存在については、2016年の調査では「大卒未満の白人有権者」がカテゴリーとして見過ごされていたためであって、結果を左右するほどの数ではない、と言い切っている。
 ただ、緻密なデータ分析を提示するオールサンも、暴力などによる選挙の混乱の可能性については触れていない。
 はたして米国独立の根源にあると説かれる「コモン・センス」が、この分断化された社会の、投票過程全体の中で本当に発揮されるのだろうか。
(2020.11.02)

武隈 喜一

テレビ朝日アメリカ 社長

1957年東京生まれ。上智大学外国語学部ロシア語学科、
東京大学文学部露西亜文学科を卒業後、出版社、通信社などを経て
1992年テレビ朝日入社。1994年から1999年までモスクワ支局長。
2010年から12年まで報道局長。2016年7月からテレビ朝日アメリカ社社長。ニューヨーク在住。

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