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2020年9月号

”Red mirage”の不気味な影

テレビ朝日アメリカ 社長  武隈 喜一

 民主党の大統領候補指名をバイデン氏と最後まで争ったバーニー・サンダース氏が、議会やメディアに対して、トランプ大統領が選挙に負けた後もハワイトハウスに居座り去ろうとしない、「悪夢のような事態」に備えよ、と強く訴えている。

  負けてもホワイトハウスを去らない

 サンダース氏は政治専門サイト”Politico”のインタビューで、「あと2か月の間、われわれができることは、負けたトランプが権力の座を去らないという〈悪夢のシナリオ〉にたいして、どう備え、なにをすべきか警鐘をならすことだ」と語っている。
https://www.politico.com/news/2020/09/04/sanders-trump-refuses-leave-office-409242
 11月3日の開票日当日の夜、激戦となっているスウィングステーツの、郵便投票を除いた当日票で、大きくリードしている時点でトランプ氏自身が現れ一方的に勝利宣言してしまう可能性を、バイデン陣営は”Red mirage”(共和党の赤い幻影)と呼び警戒している。
 その後、郵便票が続々と集計され、バイデン候補が逆転して優勢となろうが、トランプ陣営は選挙当日から郵便票集計までのタイムラグを利用して混乱を作り出し、「郵便投票は膨大な不正だ」と言い募り、その呼びかけて応じて、私的に武装した白人至上主義者たちが街頭に繰り出し混乱を煽る、というシナリオだ。
 トランプ陣営はこの”Red mirage”を「バイデン側の陰謀論conspiracy Theory”」と一蹴しているが、これまでトランプ大統領は、選挙で負けた場合に負けを認めるかという各メディアの質問に「認める」と正面から答えたことはない。

  「選挙結果について争い続ける」

 こうした事態を警戒するのはサンダースだけではなく、スウィングステーツの一つペンシルバニア州では、超党派のグループThe Transition Integrity Projectが選挙後に起こりうる複数のシナリオを検討し、「トランプは法的および法を超えた手段によって、(負けた場合でも)権力を支持するために、結果について争い続けるだろう」と結論づけている。
 大統領の座を争うバイデン候補は、トランプ大統領がホワイトハウスから去らなかった場合には、「軍がホワイトハウスからトランプ氏をエスコ-トする」と答えているが、マーク・ミレイ統合参謀本部議長は「選挙が混乱しても、軍は解決に首を突っ込まない」と、明確に介入を否定している。
 サンダース氏は、“Red mirage”が現実となったときには「それは米国の歴史に前例のないことであり、この国が築いてきたものすべてが危機にさらされることになる」と深い憂慮をあらわしている。

(2020.09.05)

武隈 喜一

テレビ朝日アメリカ 社長

1957年東京生まれ。上智大学外国語学部ロシア語学科、
東京大学文学部露西亜文学科を卒業後、出版社、通信社などを経て
1992年テレビ朝日入社。1994年から1999年までモスクワ支局長。
2010年から12年まで報道局長。2016年7月からテレビ朝日アメリカ社社長。ニューヨーク在住。

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