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選挙資金が不足、共和党は危機感

元テレビ朝日モスクワ支局長 武隈 喜一

 トランプ大統領の元側近にロジャー・ストーンという人物がいる。長年、共和党のストラテジストをつとめ、2016年の選挙ではトランプ陣営の選挙アドバイザーとして当選に貢献したが、ロシア疑惑で議会にウソの証言をしたとして禁固3年4か月の実刑を下されたにもかかわらず、今年7月にトランプ大統領によって刑が免除された人物だ。
@realDonaldTrump @realDonaldTrump(トランプ大統領のツイッター)

「FoxNews allows more negative ads on me than practically all of the other networks combined. Not like the old days, but we will win even bigger than 2016. Roger Ailes was the GREATEST!」 6:30 PM · Oct 12, 2020


「Fox Newsは他のネットワークより、わたしに否定的なCMを放ったらかしにしている。昔と違って。しかしわれわれは2016年の時より大勝利を勝ち取る。ロジャー・エイルズは偉大だった!」


  FOXを批判、激戦区で選挙CMカット

 ロジャー・エイルズは1996年にルパート・マードックとともにFoxを立ち上げ、保守派の牙城に育て上げた剛腕のメディア人で、共和党のあらゆる大統領候補がエイルズの面接試験を受けた、と言われている。2016年にセクハラで訴えられFox Newsを去った後は、トランプ陣営の選挙参謀となり、トランプ当選の立役者ともいわれていた。2017年にエイルズが死亡してからは、トランプとFox Newsとの関係には微妙な陰りがまとわりついている。

 しかし、今回の選挙でもトランプ陣営はFoxをTVでの選挙PRの主戦場としていて、この春以降のケーブルテレビCM資金1500万ドル(約15億7千万円)の52%をFox Newsにつぎ込んでいる(CNNは9%、MSNBCは6%)。
 トランプ陣営は1100億円以上あった選挙運動資金うち、860億円相当をすでに使い、懐事情が苦しく、9月はミシガン州やペンシルベニア州のような激戦州での選挙CMをカットせざるを得なかったと言われている。トランプ自身は「わたしの選挙運動の資金が底をついてきているというフェイクニュースをよく読むが、ウソだ。そうだとしたら、わたしは自分のカネをつぎ込んでいるだろう」と反論している。
 しかし、10月10日の『ロサンゼルス・タイムズ』は、トランプ陣営はすでに8月末にはネバダ州、ミネソタ州、ウィスコンシン州、ミシガン州で1100万ドル(約11億5千万円)分の広告を削り、今度はアイオワ、ニューハンプシャー、オハイオといった激戦州での1700万ドル(約17億8千万円)分の選挙広告も引き上げる予定だと伝えている。あるメディア関係者は「トランプ陣営は選挙広告投下の対象を取捨選択しなければならなくなっている。いたるところで十分な資金を使える状態ではないようだ」と語っている。

  列車脱線のスローモーションを見るよう

 一方、トランプ大統領を支える与党共和党も、トランプ陣営の不利を察して、保守派判事エイミー・コニー・バレット氏の連邦最高裁判事への承認に戦いの主軸を移している、と10月13日の政治専門サイト”Politico”は伝えている。
 ある共和党員は「トランプは撃沈したわけではないが、再選が万全というわけでもない。何が起ころうが、われわれは今は、バレットに焦点を据えている」と述べている。第1回の大統領候補討論でのトランプ大統領の逸脱ぶりが女性と老齢層の間で強い反感を買っていることに、共和党のストラテジストは危機感を強めているようで、「この2週間は列車の脱線をスローモーションで見ているようだ。もし民主党がホワイトハウスと議会を支配することになっても、バレットの連邦最高裁判事就任は大きな勝ち点になるだろう」と語っている。

(2020.10.13)

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