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「選挙は不正」は、あこぎな「資金集め」?

元テレビ朝日モスクワ支局長 武隈 喜一

 バイデン次期大統領の政権移行チームへの機密情報のブリーフィングも始まり、国務長官、財務長官など主要閣僚も続々と発表された。
 トランプ側が「選挙に不正があった」として仕掛けている法廷闘争も、ジョージア、ミシガン、ネバダ、ペンシルベニアなど接戦州で次々と敗れ、これまでのところ、一つの訴えに勝っただけで、残りの39の訴えはすべて退けられている。また11月30日にはアリゾナとウィスコンシンが選挙結果を承認したことで、バイデンが12月14日に当選に必要な選挙人数を獲得することが確実になった。

  司法長官による「敗北宣言」

 そして、トランプ大統領の懐刀ウィリアム・バー司法長官も、12月1日、ついに「選挙結果を変えるほどの規模の不正は見つかっていない」と発言した。選挙直後に、あらゆる投票不正のクレームを捜査せよ、と異例の指揮権発動していた司法長官のこの発言は、トランプ陣営にとっては敗北宣告に等しい。バー司法長官は、この発言の直後、大統領陣営から猛反発を浴びた。
 選挙後に「選挙は公正に行われた」と発言してトランプ大統領から即座に解任されたサイバーセキュリティ・インフラ安全局のクリス・クレブス前局長も、11月29日CBSテレビの番組に出演し、「トランプは選挙の信頼を失わせ、人びとを混乱させ、民主主義を危険にさらそうとしていた。しかし、投票を覆す外国の妨害もなければ国内からの妨害もなかった。選挙はうまくいった。万全な選挙だった」と語り、選挙結果を認めないトランプ大統領を非難した。

  「笑止千万」とトランプ陣営

 これに対し、トランプ大統領は即座にツイッターに投稿し、「笑止千万だ。2020年の選挙は、集票機械から不正な郵便票まで、これまでで最も不正な選挙だった」とクレブスに非難を返した。


 さらにトランプ陣営の選挙キャンペーン弁護士ジョー・ディジェノバも、最近視聴数を爆発的に伸ばしているNewsmax TVに出演し、「選挙がうまく行ったなどと考えるあのバカ者のクレブスはA級の気違いだ。引きずり出して八つ裂きにすべきだ。夜明けにひっぱりだして銃殺にすべきだ」と発言した。フォックスよりも右のメディアでは発言が過激であればあるほど話題となり、視聴者・ユーザーに受ける傾向がある。

 「あなたの支持を!献金を!」

 選挙結果を覆すことが絶望的な中、トランプ大統領がなおも「選挙の不正」を訴え続ける理由は、カネだ、と見られている。
 トランプ陣営は、”Election Defense Fund”というPAC(政治活動委員会)を立ち上げ、投票日以降1か月たらずで、すでに1億7000万ドル(約178億円)を集めている。選挙前にトランプ陣営のウェブに登録した支持者には毎日のように「あなた方の支持が必要だ。献金が必要だ」というメッセージが届き、集まった基金の大部分は選挙の不正を信じるこうしたトランプ支持者からの小口の献金だ。


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「トランプ大統領はあなたを選んだ。1000%のインパクトをもたらすために、すぐに30ドルの献金を。〈すべての合法的な票を数えろ〉Tシャツを無料で差し上げます。」

トランプ陣営から届いた献金の呼びかけ


表向きは「不正な選挙と戦う運動資金」とされているが、実際にはその75%は、選挙運動の未払い借金とトランプの次なる政治活動のために蓄えられていて、25%はRNC(共和党全国委員会)へ流れている。
 トランプ陣営も共和党の大多数の議員もこれまで大統領の敗北を認めず、おそらくバイデン政権発足後も、「不正な選挙で勝った正統性のない政権」と非難を続けるであろう背景には、分断された有権者からカネを吸い上げる「選挙商法」が成り立っているからだろう。

(2020.12.01)

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